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2020年10月15日木曜日

【致知】自由を基にした自我が民主主義だと思い込み

「致知」2017年8月号P6~P7

[巻頭の言葉] 茶道裏千家前家本 千 玄室

日本人はもっと日本を知れ より

(転載元:国際連合広報センター)
日本の歴史的な存在価値を認めたヘレン・ミアーズ女史

あまりよく知られていないことがある。それは戦後間もなく一九四八(昭和二十三)年に出された「アメリカの鏡・日本」という題の本で、著者は東洋学研究者として日本研究をしていたヘレン・ミアーズ女史である。

一九四六年、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の労働局の諮問委員のメンバーの一人として占領政策に関わった。「Mirror for Americans :JAPAN」、それは近代日本の歩みをとおして、自らの屈する西洋文明の矛盾罪悪をも問いかけたものである。

もう亡くなられたダニエル井上氏という日系二世(ハワイ出身)の方がいる。第二次世界大戦に二世部隊として参戦した勇士で、戦後はハワイ選出の上院議員となった方である。私は一九五一年、平和条約が結ばれる前の年にアメリカに渡り、ハワイで井上氏にお会いした。一九五二年、本土からハワイに戻り、大学にいた時に井上上院議員からこの本のことを伺った。

アメリカを批判し日本の歴史的な存在価値を著書で著したため、直ぐに発売禁止(一九四九年)となり、マッカーサー最高司令官は「本書は公共の安全をおびやかし、占領国日本においては出版されてはならない」という声明を出したほどの内容であったとのこと。

日本占領に関わったミアーズ女史は全章を通じて日本の近代化の過程を分析し、そして近代日本のおかした戦いを裁き、日本の社会を「民主的」に改めようとするアメリカの政策が間違ったものだと、アメリカや西欧諸国が中国や日本に対する誤った認識をもって判断することはおかしいと指摘した。日本を自分たちの考えや思いだけで洗脳することは、何でもアメリカが正しいという錯覚から起こっているというような内容であったと伺う。

アメリカ一存の民主化がはびこり続ける日本

近代日本の在り方を西洋の鏡とするためには、その精神的構造をよく認識しなければいけない。戦後の日本復活に携わった人々が果たしてそれを基に占領政策の是非の討論をなしたのかと、現在の日本の姿を観て惜しいことだったと思う。

ミアーズ女史はこの本のために追放となり、学会からも排斥され故郷で隠棲される。戦後七十二年も経っていまの日本を率いるリーダー方はミアーズ女史の著書に触れてみることが必要ではないかと思う。

発禁の本が再び一九九五年には伊藤延司氏の訳で出版された。今日の多様な世の中で国に対する筋のとおった観念がなかなか思うようにならないだけに、あまりにもアメリカ一存の「民主化」がはびこって、自由を基にした自我が民主主義だと思いこませたことの間違いを、何とか是正しなければならない。

よかく長い歴史の中に伝統と伝承によって受け継がれてきた日本文化や生活の在り方の合理的且つ衛生的、そして清潔さをモットーとしてきたことを確実に知り、身につけることをしなければ、ミアーズ女史に申し訳ないのである。



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ヘレン・ミアーズ
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